手荒れ

手荒れ

手荒れとは

手荒れとは、別名手湿疹とも言いますが、乾燥やアレルギーなどが原因で手や指の皮膚のバリア機能が低下してしまい、皮膚が荒れるものです。特に寒い冬などでは、手の皮膚の新陳代謝が低下したり皮膚のバリア機能は低下しやすくなります。家庭で水仕事の多い主婦にとってはとてもつらい時期です。

どうして手の荒れが起こりやすいかというと、もともと手の皮膚は他のお肌と比べて皮脂を分泌する皮脂腺が少なく、乾燥しやすい部分でもあるのと同時に、汗腺が多いという特徴もあり乾燥やアレルギーなどの刺激に対し皮膚表面の角質層がダメージを受けやすいからなのです。

アレルギー体質もある程度は影響しますが、通常の状態では皮膚の脂質と常在菌のバイオフィルム(善玉菌の表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌などの悪玉菌の拮抗状態)で何重にもバリアが張られています。皮脂のバリアと細菌のバリア、弱酸性で他の菌を寄せ付けないというバリアで覆われた皮膚表面なのですが、その皮脂を洗ってしまう事で皮膚表面にダメージを受けやすい状態になります。

この状態でもすでに手荒れと呼ばれるものですが、皮膚が正常な状態ではないため、皮膚の常在菌の拮抗状態が崩れると、細菌が入り込みやすい状態になり炎症を起こすことがあります。炎症を起こすとさらに手荒れが悪化してしまいます。そしてバリアで守られた皮膚は寒さや乾燥した空気の中で皮膚が収縮します。弾力を失った皮膚は張り詰めることと、外的な刺激によってひび割れを起こします。

乾燥してひび割れを起こして細菌のバランスが崩れても、元の細菌分布に戻るまで30分程度しかかかりません。そして中性脂肪が脂肪酸とグリセリンに加水分解されて、皮膚表面が弱酸性になります。

手荒れは自然に治る事もありますがひどくなると出血したりヒビが入ってしまうこともあります。忙しかったりしても放っておかずにきちんと受診しましょう。

手荒れの原因

手荒れの原因として最も多いのが、寒い時期の乾燥です。気温も湿度も下がってしまうと、体内の熱で汗が気化するとともに、皮脂の分泌も少なくなっていきます。私たちが職場や家庭で何気なく使用している物からも起こります。特に水仕事やシャンプー、手洗いなどが大きな原因と考えられています。寒い時期に食器洗いなどで油分を落とす際、同時に手の表皮の脂質まで落としてしまいます。皮膚を守るために欠かせない脂質(皮脂層)ですが、食器用洗剤と温かいお湯によって落ちやすくなります。

手荒れは手湿疹とも言われています。手荒れを起こしやすいアトピー体質などもありますが、職業別では、食器洗いや洗濯などの洗剤を用いた水仕事の多い主婦や、シャンプーやリンスを使用して洗髪を行う美容師、飲食業、紙は皮脂を吸い取ってしまうため日々紙幣を扱う銀行員、清潔のため手洗いやアルコール消毒を行う医療従事者などに多くみられます。特に寒い冬の季節のひびやあかぎれは避けられないものです。

食器用洗剤は高い洗浄能力があるものの油汚れと同様に皮膚の皮脂膜まで落としてしまいます。特に冷たい水よりも暖かい水の方が皮脂は落ちやすく、冬場などで温かいお湯を用いて食器洗いなどをすると必要な皮脂まで失われてしまいます。また、医療従事者や飲食店に勤める従業員が行う手洗い後のアルコール消毒は、アルコールが揮発する際に皮膚の水分も一緒に失われてしまうため、手荒れの原因となる乾燥を引き起こします。手の皮脂や細菌を落としてしまうと、人間が本来もっている皮膚のバリア機能を無くしてしまいます。冬は乾燥するだけでなく、代謝が低下するので特に手に悪い季節です。特に手の甲は皮脂腺が少なく弾力に欠けるため、皮膚のバリア機能も低下してダメージを受けやすくなります。

通常私たちの皮膚の表面は、皮脂腺から分泌された皮脂と、汗腺から分泌された汗が混ざり合い乳化した皮脂膜によって覆われ外部からの刺激や乾燥から皮膚を守っています。しかし、繰り返しの水仕事や洗剤、アルコールや紙幣などの刺激が加わることで皮膚表面の皮脂膜は損なわれ手荒れを起こしていくのです。

手荒れの治療法

手荒れの治療以前に予防が大切なのですが、そうは言っても完全に予防する事は困難です。手荒れの治療のためには水仕事であれば暖かいお湯を使うのを避けたり、洗剤を使う際は手袋を使ったり、手に保護膜を作るクリームを塗ったりして予防が大事なのですが、途中で取れてしまったりするので、手荒れを予防することは難しいものです。治療より予防が先だと判っていても出来ない事もあります。

アルコールで拭くのは手荒れに良くないのですが、意外とやってしまうのが医療従事者。手の甲の皮脂は一拭きで消えて無防備な状態に。アルコールは角質層まで取れてしまいそうな勢いで脂質を溶かします。ひびわれを起こしやすい人は防水テープなどで事前に対策を行っておきましょう。また、感染症をおこしやすくなっているのでひびやあかぎれから手を守ることも大切です。

手荒れになってしまった時は、失った皮脂層の代わりに保湿剤や防水テープを貼りながら悪化を防ぐ、というのが一般的です。仕事柄、そこまでマメにケアできる人は少ないかもしれません。

そこで、ワセリン基剤を用いた亜鉛軟膏であったり、刺激の比較的少ない尿素が配合された(ウレパールローション、ケラチナミンクリームなど)であったり、人間の体内にあるヘパリンに似た構造のヘパリン類似物質(ヒルドイド・ビーフソフテン)のクリームを塗ることで、バリア機能を回復させて保湿だけでなく、血行促進や抗炎症作用まで期待できます。炎症がひどい場合やアレルギー性のもでは副腎皮質ホルモン(ステロイド外用薬)を使うこともありますが、その場合は対症療法になります。ステロイドには強めのステロイドとしてアンテベート、ネリゾナ、デルモベートなど、やや弱めのステロイドとしてリンデロンVG、リドメックスなどがあり、症状に応じて使い分けていきます。

あくまでも保湿が基本になります。手荒れの治療は保湿と乾燥を避けることが重要なので、保湿剤をべったり塗って手袋をするとより効果的です。